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桜は終わりかけですが、あちこちに花が咲いていて良い季節ですね。通勤にもだいぶ慣れてきて、通勤路にいる3匹組のワンコに癒されたりしています(*´∀`*)
さて、今日もイチゼロの話です。長い話は久々なので、文章的に纏まっているかちょっと心配なのですが・・・
小説は続き~からどうぞ。
《ボクらのトモダチ・2 》
「イチ、何をしているのです?」
着いてきていた足音が遠ざかるのに気付いたのか、ゼロが研究室の前に戻ったボクを追って訊いた。
「しー!中でナニ話してるか聞いてるんだから、静かにして」
「こら、盗み聞きなどしてはなりません。はしたない・・・」
『いい加減にしてください!』
バンッ!と机を叩く音と珍しく怒鳴る博士の声に驚いて、ボクらはその場で固まってしまう。人間よりずっと性能の良い耳は、少し注意するだけで扉越しの声も室内にいるように鮮明に捉えた。
『メモリに関しては、うちの研究所で開発しているボーカロイド全てが同じシステムを搭載しています。〈初音ミク〉と〈メイコ〉で異常が出ていないのに、何故敢えてまた〈カイト〉で行う必要があるのですか!?』
『同じシステムだって、搭載している機体は違う。実験もせず後で問題が発生したら、それこそどう責任を取るつもりだ?大体、記録は保存しておけば元に戻せるんだろ?そんなに騒ぐ事でもない』
『そう単純なものではないんですよ!そもそも〈ミク〉も〈メイコ〉も実験ではなく、必要に駆られてメモリ削除をしただけで、その後メモリを復元した訳じゃない。ボーカロイドはパソコンとは違うんです。メモリは人間の記憶のように繊細なもので、いくらバックアップが取ってあったとしても、必ず同じように復元される保証は・・・』
『持ち主のいる商品ならいざ知らず、あれはこの研究所の実験機。駄目だったらそのまま初期化すればいいだけの話じゃないか。今までの稼働データが重要だと言っても、同じ期間動いている同じ機体があるんだから片方無くなっても構わないだろうし。そもそも“あっち”は、本来起動させない筈の・・・』
なにそれ・・・なに、それ!
博士、ゼロのメモリ戻すって言った。なのに、復元されないかもしれないって・・・ずっと一緒に過ごしてきたゼロの、大切な記憶。それが、なくなるの?
感情回路がオーバーヒートしそうなくらいにザワザワして息が出来ない。すっごくキモチワルイ。
とにかく今の話を詳しく聞かなきゃ、と思ってドアノブに掛けようとした手が、同じ形の手に押さえられた。
「行きますよ、イチ」
「でも、ゼロ!」
「・・・行きましょう」
少し上擦った、掻き消えそうに細い声に促されて、ボクは自分の手の上でカタカタと小刻みに震えるそれをぎゅっと握ると部屋へ戻った。
「ゼロ・・・さっきの話もう一回詳しく聞いて、ちゃんと記憶が戻らないかもしれないんなら削除はイヤって言おう。博士だってあんなに怒ってた、きっと何とかしてくれる」
ボクらに与えられた個室で、二人で寝ても余る大きなベッドに座って言うと、繋ぎっぱなしの手に一瞬だけ力が籠もる。でも
「そのような事を申しては、博士に迷惑をお掛けしてしまいます。清和様のご機嫌を損ねて援助が止められてしまえば、“弟妹”たちの為の研究に支障が出てしまうでしょう?」
「だけど・・・でも、そういうコトじゃない!ボク嫌だ、ゼロがボクを忘れちゃうかもしれないなんて。ゼロは平気なの?ボクを忘れちゃっていいの!?」
「っ、平気な筈がありません!」
起動して初めて聞く、ゼロの怒鳴り声。ううん、怒鳴り声って言うより悲鳴みたいだった。
「誰が好き好んで貴方の事を・・・何より一番大切な相手を、忘れたいと思いますか?!まして我々は人間とは違う、設計図さえあれば“同じ”がいくらでも作れるアンドロイド。個の拠り所である記憶すら無くしてしまったら、それはもう私じゃない。同じ器の“違うモノ”でしょう」
そう。たとえ人間が記憶を無くしたって別人にはならないけど、ボクらは“ツクリモノ”。
ボクとゼロが全部同じに作られていても別の人格になったように、記憶を・・・メモリを失ったゼロは、起動し直したとしても今のゼロにはならない。そんなのゼロの身体をした“ニセモノ”だ。
「けれど私たちは、この研究所に所有される実験機なのですよ?命令されたならばそれを受け入れる事が、私たちの役目。それに・・・最悪、研究が打ち切られれば研究用機体である貴方と私が、これからも二人一緒に過ごせるという保証すら無くなります。私は・・・貴方と離れたく、ありません」
掴んだゼロの肩が・・・ぎゅっと胸の前で合わせた手も、絞り出すみたいな最後の言葉も、全部が震えてる。それを止めたくて、隣の身体をきつく抱いた。
「ごめっ・・・ごめんね、ごめんねゼロ!ボク、とってもひどいコト言った。ねぇ、メモリの削除、ボクじゃダメなのかな?ゼロが怖いなら、ボクが代わりに・・・」
ゼロはいつも冷静であまり感情を表に出す事は無いけど、でも実はすごく優しくて、笑うととってもキレイで、時々ぎゅうって抱き締めたくなるほど可愛いって、ボク知ってる。そんなゼロのコトを忘れちゃうなんて怖いし、本当はすっごく嫌だ!
だけど、そんなゼロがこうやって震えてる方が嫌で、辛くて見てられなくて言いかけると、背中に回された手がそれを遮るようにキュっとボクのコートを握って
「博士は貴方ではなく“ゼロ”、と仰ったでしょう。私の“立場”を良く考えて御覧なさい?もしもの事があるような、こういう時の為に私はいるのですよ。・・・それに私は記憶を失くすよりも、私を覚えていない貴方を見る方がもっと恐ろしい。だからこれで良いんです、貴方が気に病む必要はありません」
『それに案外、無事に復元されるかもしれませんよ?』と、慣れない作り笑いを浮かべてみせるゼロの震える身体を抱き締めたまま、何も出来ないボクはただきつく目を閉じた。
**********
人間が記憶喪失になるのと、アンドロイドがメモリを全部失うのは、やっぱり違いますよね・・・。
続き
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