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「アイス大好きな歌う青い兄さん」にやられた可哀想な人のブログです。
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≪マスターと秋の味覚≫


「秋刀魚が良く出る時期だなぁ」

 目の前には、この時季お馴染の秋刀魚。塩をふられた細長い体に香ばしい焦げ目をつけて、大根おろしと一緒に皿の上で食われるのを待っている。

「・・・ダメでした?」
「いや、そんな事ないぞ。ただ、すっかり秋だなぁと思ってさ」

 ふっくらした身に箸を入れると、パリパリの皮と一緒に一口。焼き具合も丁度いいし脂がのっているし、旬のものはシンプルな調理法でも美味いな。

「よかった。マスターお魚好きだし今とっても安いから、つい買っちゃって」
「カイトは蒲焼とか竜田揚げとか、色々工夫してくれるから飽きないよ。母さんは秋刀魚っつったら常に塩焼きだったから、さすがに10月くらいになると飽きてな・・・。あっ、1回だけ干物にして出した事あったっけか」
「干物って、お家で作れるんですか?」
「開いて干すだけだろうから、出来ない事もないんじゃないのか?」
「ふぅん・・・オレも今度、やってみますね」
「じゃあ、楽しみにしとくな」
「はい!」

 そう言って笑うカイトを見たのは、ほんの一週間ほど前の事だった。

「なんだ、ありゃ」

 家の門からベランダを見上げると、靴下やハンカチなどの小物を干す、洗濯ばさみが沢山ついたハンガーに吊るされたものがキラリと光った。明らかに衣服ではない、沈みかけた秋の日差しを反射しているそれは・・・

「お帰りなさい、マスター。今日はずいぶん早いんですね」
「ただいま。今日は出張先から直で帰ってきたからな。ところでカイト、あれ・・・」
「サンマです!今日も安売りしてたんですけど、この間マスターが干物の話をしてたので、オレも作ってみました」

 えへんっ!と言わんばかりに胸を張るカイトだが・・・あれが正しい自家製干物の干し方なのか!?だってあれ、洗濯物干すために作られたもんだろ?メーカーだって、まさか秋刀魚が干されてるなんて夢にも思ってねーよ!!

「もう取りこむ時間ですから、これから焼きますね。今日はお天気も良かったから、キレイに干せましたよ!」
「あ・・・そうか。そりゃ良かったな」

 

 1時間後。綺麗な焼き色を付けて食卓に出された干物は、悔しいくらいに美味かった。*


*****************

《マスターのチョコレート》

※〈マスターとチョコレート〉の後の話です


「あー・・・本当、気にすんなよカイト」
「うぇっ・・ひっ・・だ・・って・・」

土曜日の昼前。風も無く良い天気だというのに、俺の背中は土砂降りだ。

 発端はほんの十数分前。ミクちゃんとリンちゃんが、数日遅れのチョコレートをカイトと俺に持ってきてくれた。そこまでは良かったんだが・・・

「お兄ちゃんはコッカさんにどんなチョコあげたの?」
「バレンタインって、女の人がチョコくれる日じゃないの?」
『えっ?』

 カイトの答えに首を傾げる女の子二人。そういや結局、バレンタインについて教えていなかったっけ。

「なに言ってるんスか、カイ兄!バレンタインは、好きな人にチョコをあげる日っスよ!!」
「えっ、そうなの!?だってオレ、幼稚園で女の子とか女の人にチョコもらったよ?」
「あ、あのね、普通は女の人があげるの。それに、好きな人だけじゃなくて、お世話になってる人とか友達にあげたりもするし・・・」

 不穏な空気を感じたミクちゃんが慌ててフォローするが、その端からリンちゃんが唇を尖らせて

「でもやっぱり、バレンタインは好きな人にあげるのが一番の目的っスよ?男だってあげるってニュースでやってt・・・」
「ええっとぉ!リンちゃん、次はマスターにくれるんでしょ?そろそろ行かないと。じゃあまたね、お兄ちゃん、コッカさん!!」
「あっ、そうだったっス。じゃあね、カイ兄、チヨ兄!」

 そう言って二人が出ていった途端、カイトが泣きながら背中にしがみついてきた、という次第である。

「だから、泣くなって!ミクちゃんも言ってたろ?普通は女がやる行事なんだよ」
「でも、だってリンちゃんが、好きな人にあげるって言ってました!それにマスター、ミクやリンちゃんにもらったし。オレが・・・オレの方が二人よりずぅっと、マスターが大好きなのに!」

 涙声で熱烈な告白をされて、照れくさいやら嬉しいやら複雑な気持ちが落ち着かないまま、胴にきつく回された腕を軽く叩く。

「あーもう、本当お前は・・・そんな事言ってると、チョコレートの代わりに食っちまうぞ?」

 緩んだ細い腕の中で身体を反転させ、ようやく見えた泣き顔に苦笑しながら、気分を変えようとそう言えば

「ふぇ?オレ、チョコの代わりになりますか?・・・それなら、食べてください!」
「ばっ、冗談だっつーの!」
「だってオレ、他にあげるもの無いし・・・それに、マスターがミクたちのチョコだけ食べるの、なんか・・・や、です」

 嫌ってお前、自分だってもらっただろ!とか、そんな突っ込みは丸ごと放棄すると、俺は涙と恥ずかしさとで目尻を赤く染めたカイトを、言葉も無く担いで二階の自室へと上がっていった。

 ・・・ミクちゃんとリンちゃんのくれたチョコレートも良かったが、やっぱり最初に“食べた”のが、何より一番美味かったな。


******************

《カイトとマスターの起こし方》

※〈マスターとカイトと動画サイト〉の後の話です

 

 最近、朝マスターがなかなか起きてくれない。
 今までは大体自分から起きてたし、そうじゃない時も一回声をかければちゃんと起きてくれてたのに。

『冬の布団にはな、人を離れさせない魔法がかかってるんだよ』

 どうして起きないんですかって訊いたらそう言ってたけど、オレはボーカロイドだからその魔法にはかからないのかな?

「マスター、もう起きる時間ですよ!」

 いつもオレが先に起きるから、壁側に少し寄って寝ているマスターは今日もお仕事なのに、横向きになって目を閉じたまま全然動いてくれない。

「マスター、起きてください~」

 そういえば昨日見た動画、同じようにマスターを起こすのに苦労してる〈カイト〉のやつだったんだ。
 その内容を思い出してちょっと恥ずかしくなりながら、静かに眠ってるマスターの寝顔を見つめる。えへへ、やっぱりカッコイイ。髪の毛は今日もあちこち跳ねてるけど、こうやって見ると案外まつげが長い・・・

「カイトは『ちゅーしますよー』って、言ってくんねーの?」
「ふぇあっ!?」

 触れそうなくらい顔を近づけたら、突然ぱちりと開いた焦げ茶色の瞳がオレを見てそう言った。

「まっ、マスター!?寝てたんじゃないのですか?」
「いつも俺、寝てる訳じゃないぞ。単に布団から離れがたいだけで」
「ええっ!?そ、そんな・・・」

 じゃあ、今まで起こす前にいつも見てたのも気づいてた!?わぁっ、恥ずかしい!
 慌てるオレに向かってニッと笑ったマスターは、自分の唇に人差し指をトントンって当てる。

「・・・したらマスター、起きてくれます?」
「勿論」

 キスなんてたくさんしてるのに、こうやって改まって言われると恥ずかしい・・・昨日の動画の〈カイト〉は自分からあんなこと言えるなんて、すごいなぁ。
 顔が見られなくて、ギュッと目を瞑ったまま触れるだけのキスをすると、両腕を伸ばしてオレの身体を抱きしめてくれたマスターは

「おはよう、カイト」
「・・・おはようございます、マスター」

 こういうのも良いかもって、ちょっとだけ思ったのは内緒にしておこう。


 

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08夏からボカロ家族に夢中になり、遂にカイトにやられて読み専から書き手に。
ベタな展開と妄想が大好きです!
かなり根深い腐女子(貴腐人?)なので、色々すみません・・・

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