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《あなたの微笑みは薔薇色の鎖・23.5 》
「・・・すおう、さん」
“みゃー”
静かな部屋の中。囁くように呼んでみると、傍で寝そべっていた猫の真白が僕を見上げて『ワタシの名前じゃないわ』っていうみたいに鳴いた。そうだね、だってこれは・・・マスターの名前だもの。
マスターに名前で呼んでいいと言われて以来、何度も練習をしてるんだけど、あの青灰色の瞳を前にするとどうしても声に出せない。お爺ちゃんを名前で呼ぶ時は、全然平気だったのに。
「もう!マスターはマスターでいいよね?だって、僕のマスターには違いないんだし」
でもやっぱり本当は、名前で呼んでみたい。だって好きな人の名前は特別だもの。こんな事でドキドキしているようじゃ、本人を前にして呼ぶなんて当分無理そうだけど。
大きな溜息を一つ吐いた時、三角の白い耳がピクリと襖の方を向いた。
「あ、マスター。お風呂上がられたんですね」
「ん」
音も無く開いた襖の向こうから、肩にタオルを掛けたマスターが現れる。
ボーカロイドの僕でさえ足音も気づかないんだけど、流石に動物は気配が分かるみたいで一早く反応するから、真白と一緒の時だけは急にマスターが来ても驚かないでいられるんだ。
「・・・寝る、か?」
しばらく黙って僕を見下ろした後、こうやって問いかけるのがマスターからの“お誘い”の言葉。今まで『いいえ』と答えた事は一度も無いそれに、赤くなっていく頬を押さえながら
「あ、は、はい。・・・ええと、ごめんね真白。今日は一人で寝てくれる?」
これから抱かれに行くと分かってるマスターの部屋に、まさか一緒に連れていく訳にいかない。
体を伸ばして寛ぐ真白にそう言うと、青と黄色の目が僕たちを見上げてから、敷いてあった布団の真ん中で丸くなった。
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「・・んっ・・ふ・・ぁっ・・んんっ」
後ろから、熱くて硬いものが僕の身体を穿つ。
冬場の土いじりのせいか、いつもより荒れてがさついた指に弄られて反応を示し始めた胸の突起がシーツに擦れると、奥を突かれるのとはまた違うもどかしい快感が加わって、突っ伏して掴んだシーツに皺が寄った。
「腰、揺れてる」
「やっ!そんなの、言わないで・・・」
事実確認のようにボソリと呟かれるとすごく居た堪れなくて、逃がれるように顔を上げて身体を反らせば、いつもは閉まっている隣の洋室への襖が僅かに開いているのに気付いた。
こちらの部屋の明かりを受けるマスターの机の上に、白と水色を重ねた不織布に青いリボンで口を留めた、若い女性の好みそうな可愛らしい小さな袋が置いてある。
『ああ、そう言えば・・・』
昼間テレビでやっていたっけ。明日は2月14日、バレンタインデー。
最近は友チョコや自分チョコなんかもあるみたいだけど、やはり一般的には、女性が男性に愛を告白する日として知られている。明日はお休みで学校は無いから、マスターも今日の内に渡されて・・・
「カイト?」
「っ・・ぁんっ!」
ぼうっと一点を見つめる僕に、怪訝そうに声をかけるマスターが僅かに動きを変えると、ナカで当たる場所が変わって思わず高い声が漏れた。これ以上恥ずかしい声を上げないように慌てて指を噛み目を閉じたけど、さっき見たものが瞼の裏に焼き付いて離れない。
ああ嫌だ、何ておこがましい事を考えてるんだろう。ロイドの癖に・・・僕がいるのにそんなもの受け取って、なんて醜い嫉妬心が沸々と沸き上がってくるのを止められない。
ねぇマスター。貴方にあれを贈ったのは、どんな女性ですか?美人かな?それとも可愛らしい人かな?マスターと仲が良いんですか?その人は貴方の事、どうやって呼んで・・・
「・・すおう、さん・・・ひぁっ!!」
唇から零れた声に、深く僕に埋められたそれがいきなり体積を増した。
ただでさえきついその場所を急に拡げられた痛みと、お腹の奥を圧迫される苦しさに悲鳴を上げると
「っ!すまん」
「ちがっ・・僕、ごめっ、なさい。名前・・・ぁ・・ふぅっ」
きっと締め付けてしまったんだろう。息を詰めた後で小さく謝られて、大きなままのマスターが僕の中から抜け出していく。嫌だ、どうして・・・
「いいから。もっと呼べ、カイト」
「なっ!?・・・あぁっ!」
熱の籠もった低い声が耳の中に吹き込まれたかと思うと、くるりと仰向けにされた僕の膝裏に入った手がそれを大きく押し開き、再び一気に貫かれた。
「ぃあっ・・ぁっ・・みない、でっ、見ないでぇ!・・やぁっ、すおぅ・・さんっ」
さっきまで見えなかった、獰猛な熱を含んだ青灰色の瞳が見下ろしているのに気がつくと、まるでこの醜い気持ちを見透かされているようで・・・隠すように顔の前で腕を交差して叫ぶ。
「カイト・・・カイトっ」
「ぁ・・やっ・・蘇芳さ・・すお・・さんっ」
呼べと言われたそれを声に出せば、こんな歪んだ思いも消えるんじゃないか。
身体も意識も奪い尽くすような熱くて激しい交わりに、霞み始めた意識の隅でそんな馬鹿な事を考えながら、何度も何度も目の前にいるその人を呼び続ける。
「はぁっ・・んくっ・・すおう、さ・・蘇芳さんっ・・・ぁあっ・・蘇芳、さんっ!」
ナカを掻き混ぜられてグチュグチュと泡立つような水音と、肌のぶつかり合う乾いた音。そして自分が上げる淫らな声に耳をも犯されながら、僕は顔を隠していた腕を伸ばして逞しい肩に縋りついた。
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喘ぎの合間にマスターの名前を呼んで、何度もイかされて、ナカで出されて・・・感じすぎて泣きながら強制終了するまで激しく抱かれた身体は、動けないどころか腰から下の感覚が殆ど無い。
最初にマスターがイった段階で既に朦朧としていたから、その後の自分の醜態をあまり覚えていないのが唯一の救いかもなんて、綺麗に後始末された身体と障子越しの朝日の眩しさに遠い目をしながら考えていると
「大丈夫か?カイト。その・・・すまなかった」
「あ、いえ・・・午後には、動けるようになると思いますから」
知らない人から見たらいつもと大して変わらなく見えるだろう、僕からしたら凄く心配げな様子のマスターの手には、昨日机の上に置いてあった水色の小さな袋。
昨夜の熱で掻き消された筈のドロドロした感情が一気に沸き上がってきて、それを悟られないように顔を伏せようとすると、何故かそれは僕に差し出された。
「爺さんが、カイトを買ったのは14日だと書いていたのを、思い出して。・・・誕生日、なんだろう?」
「ぇ?・・・あっ!」
そうだ、僕は6年前の2月14日にこの家に来たんだった!お爺ちゃんが毎年小さなケーキを買ってお祝いしてくれていたのに、すっかり忘れてた。
「カイト?・・・その、違っていたか?」
自分の誕生日を忘れていたのと、ひどい勘違いに気付いたので呆然としていた僕が何も言わないからか。マスターが伺うような口調で訊きながら袋を取り上げそうになって、慌てて胸元にそれを抱き込む。
「いえ、合ってますっ、今日です!・・・開けてもいいですか?」
「ん」
いつもの調子で頷かれて柔らかい青いリボンをそっと解くと、中から出てきたのはちょっと真白に似た、可愛い白猫のキーホルダーだった。
「この間、家の鍵につけていたのが壊れたと言っていたから」
そう言えばいつだかご飯の時に、そんな話をした気がする。マスターはそんな些細な事を覚えていてくれて、こうやってプレゼントまでくれたのに。それなのに僕は・・・
「っ!?どうした、気に入らなかったか?」
「ちがっ・・・その・・・ごめんなさい!僕、それをマスターが貰ったものだと思って・・・」
「俺が?どういう事だ」
僕が急に泣き出したせいで動揺した様子のマスターに訊かれて、昨夜の事を話す。ああ、でもこんな事を話して、もしこの人に呆れられてしまったらどうしよう。
「昨夜、何度も俺の名前を呼んでいたのも・・・その、嫉妬のせいか?」
声を上げ過ぎたせいでひどく掠れた、しかも泣いていて聞きづらい言葉を辛抱強く聴いてくれたマスターは、僕が全部話し終えるとそう呟いた。
「・・・はい。僕、マスターがこうしてプレゼントを下さってすごく嬉しかったんです。なのにそれをマスターがもらったものだと勘違いしていた挙句、嫉妬までして・・・最低だ」
昨夜の事が恥ずかしくて、マスターを疑ってしまった事が申し訳なくて。俯きながら頷くと、珍しくマスターの手が僕の髪をゆっくりと梳きながら
「カイトがそれを喜んでくれたのなら、俺はいい。それに勘違いとはいえ、俺がチョコレートを貰ったと思って嫉妬したという事は、それなりに好いてくれていると取って、いいんだろう?」
優しい言葉を掛けられて、また涙が浮かんでしまう。でもマスターは僕が泣くのが苦手みたいなので、それをぐっと堪えると
「でも・・・あの、じゃあ僕に何か、出来る事はありませんか?僕は“嫁”なのに、マスターを信じられなかった事への償いをさせて欲しいんです」
このままじゃ自分で自分が許せない。
マスターの優しさに甘えてばかりで、いつか取り返しのつかない事をしてしまったら嫌でそう訊くと、少しだけ眉を下げて困ったような顔をしたマスターは
「名前を・・・」
「名前?」
「俺は自分の名前が、あまり好きではないんだが。カイトに呼ばれるのは、悪くない気がする。だから・・・いつもじゃなくていい。昨日のように、呼びたい時だけでいいから。俺を、名前で呼んでくれないか?」
昨日の事を出されると、逆に呼びづらいんだけど。
今は眼鏡の無い青灰色の綺麗な瞳にじっと見つめられて、抑揚は無いけれど真摯にお願いされたら・・・僕の言い出した事だもの、否と言える筈が無い。
「分かりました。それとさっきの・・・それなりなんかじゃなくて、僕はすごく大好きなんです・・・蘇芳さん、の、こと」
それでもやっぱり顔を見て、というのはどうしても恥ずかしくて。布団に顔を隠して言えば、大きな手が分かったと言うように、優しく僕の頭を撫でてくれた。
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